校長室から 12/6
2021年12月6日 14時13分R3.12.6. 校長室から
触れ合うことの大切さ
触れ合うことが大切、スキンシップが大切。そんなことは言われなくとも分かっていることでしたが、これに関して、脳科学者の中野信子氏が大変興味深いことを言っておられました。(https://president.jp/articles/-/44937?page=1 参照)紹介いたします。
今回は、中野信子氏の内容を元に本文を作成しておりますので、「~らしいです」「~のようです」と言った、伝聞表現が頻繁であることご了承ください。
道路の両側にある側溝には、たいてい蓋があります。コンクリートの蓋の場合もあれば、金属の柵状の蓋(=グレーチング)の場合もあります。我が家で飼っているゴールデンレトリバーは、このグレーチングの上は歩きません。歩きたがりません。おそらく、下が透けて見えて怖いからではないかと思います。グレーチングと似たようなもので、床がガラスあるいはアクリルでできている、ガラス床があります。ガラス床は、東京スカイツリーや東京タワー等に設置されています。確かに下が透けて見えると、どんなに強度的に大丈夫とは思っていても、へっぴり腰になってしまいます。そのガラス床を用いたラットの実験のことです。
ガラス床を歩く実験をラットにおこなった場合、下が透けて見えても平気で渡ってしまい、餌にありつけるグループがあったそうです。そのグループには、ある特徴がありました。親が子をよく舐めて育てる『グルーミング』をする、という特徴だそうです。本当に『グルーミング』が影響しているのか、ただ単に勇気のあるDNAを持ったラット家族だったからなのか、それを検証する必要があります。次に、子どもだけを入れ替えて育てさせ、同じ実験をしたそうです。結果は、やはりグルーミングをしてもらった子は、ガラス床を抵抗なく渡ることができるようになったらしいです。
つまり、ガラス床でも渡ってエサを手に入れようという意欲は、『グルーミング』による結果であることが証明されたということでした。
このガラス床を渡ってエサを手に入れたラットの脳を調べたところ、恐怖を感じる場所(海馬と扁桃体)が、親に舐められることによって変化したことが分かったそうです。接している時間、育ててもらったという経験によって、脳そのものが変化したということです。これは凄いことだなと思いました。
ラットの実験結果から、接している時間、育ててもらったという経験によって、脳そのものが変化することが分かったということは、極めて重大なことではないでしょうか。頭の使い方を工夫するという努力の側面だけではなく、頭(=脳)の性能をアップできるというハードウェアのアップグレード変更と解釈することもできるかもしれません。
このグルーミングで変化した海馬と扁桃体は、私達の長期記憶にも大きな働きを担っているようです。若干短絡的ではありますが、グルーミング(=スキンシップ)を積極的におこなうと、記憶の向上も期待できると考えることもできるかもしれません。
私達ヒトのグルーミングは、スキンシップと考えることができます。スキンシップは大切なことだということは、幾度となく聞いてきたことですし、十二分に分かっていたつもりでした。しかし、スキンシップは心の安定を図るためだけのものではなく、脳の発達を促すことにつながるということに、私は驚きを隠すことができませんでした。
ぜひ、親子のスキンシップ(=グルーミング)をお願いいたします。保護者の皆さんが日々忙しいことは十分に分かっているつもりです。しかし、積極的にスキンシップを図ることで、お子さんを含めた家族が脳に良い変化をもたらすのであれば、やってみる価値があるのではないでしょうか。