こんなことがありました!

2021年9月の記事一覧

校長室から 9/30

違いを受け入れる <気楽に読んでください>

 学校で「好きな食べ物(メニュー)は何ですか?」と聞かれる機会があります。年齢相応では無い答えかなぁ・・と思いつつ「カレーライスです。」と答えます。そんなカレーライスにまつわる話です。
 今から50年近く前、自分が子どもだった頃、千葉県の親戚T君親子が我が家に来たときの事です。その日の夕飯は、T君のお母さんがカレーライスを作ってくれることになりました。カレーライスが大好きな私は大歓迎でした。夕方近くからT君のお母さんはカレーライスを作り始め、いつもの匂いが台所に香り始めました。香りにつられたT君とT君の妹と私の3人の子どもが、台所周辺をウロウロとし始めました。数分後「さぁ、できたから味見をしてくれる?」と、T君のお母さんは小皿にカレーを入れ、私に差し出しました。いつもの味、いつもの香りに「うん、おいしいです!」と答えると、T君のお母さんは「じゃぁ、これでできたね!」と、夕飯作りの完了を宣言しました。その直後、とても信じられないことが起きました。T君のお母さんが、できあがったカレーの中にドボドボとトマトケチャップを入れてしまったのです。あまりの衝撃に、金縛りにでもあったかのように固まってしまうと同時に、せっかくのカレーライスが台無しになってしまったと感じた私は、テンションがどん底まで落ちてしまいました。
 夕食の時間、T君とT君の妹は「お母さん、カレーライスとっても美味しいよ!」とお替わりをしていました。私はトマトケチャップの酸味がきいたカレーライスがなじめず、1杯を食べるので精一杯でした。あんな少量のカレーライスで満腹(いや飽和?)したのは初めてでした。
 それから何年か経った夏休みに、家族旅行で岩手に行きました。父親の運転で目的地に向かう途中、ドライブインで昼食をとることになりました。自分が何を注文したか、まるで記憶に残ってはいませんが、左前方のテーブルに座っていたトラックの運転手さんと思われるおじさんの行動に、目が釘付けになってしまいました。注文したカレーライスがおじさんの手元に届くと、おじさんは左手にソースを持って、カレーライスに回しかけ始めたのです。そして、ソースを2周もかけたカレーライスを、おじさんは凄い勢いで食べ始め、あっという間に食べ終わってしまったのです。そのソースがかかったカレーライスと、何年か前にT君のお母さんが作ったトマトケチャップが混ざったカレーライスと普段自分が食べていたカレーライスが頭の中でぐるぐると回り始め、『自分はとても大きな勘違いをしていたのかもしれない!』と思いました。
 カレーライスって、いろんな食べ方があるのか!?我が家のカレーライスが普通だと思っていたけど、ひょっとすると家庭によって全部違うのかもしれない。それは、カレーライスだけではなく、すべてに言えることなのかもしれない。自分の家が普通、自分が普通とみんな違うのにみんな普通って思っているのかもしれない。
 この経験は、その後の私に多大な影響を及ぼしました。自分の極めて狭い考え・経験が普通であると考えるのは早計である。わずか数人の考えが一致しただけでそれが正しいと考えるのはとても危険である。普通とか、常識とか、共通する部分を探して安心するのではなく、違いを楽しみ許容範囲を広げる方がはるかに豊かに楽に生きられるに違いない。
 これからの子ども達は、私達大人が想定しているよりはるかに多種多様な人と付き合っていかなくてはなりません。言語の違い、文化の違い、生活習慣の違い、宗教の違いに驚いてはいられません。競争相手はクラスメイトだけではなく、アメリカの、中国の、ロシアの(以下省略)同世代の子ども達です。違うのは当然です。その違いを相違点として受け止めるのではなく、価値観を広げる事ができる肥やしとして受け止め、話し合いながら協力し合い、将来の地球を担う若者として、大きく育ってほしいと常々思っております。